先日マスコミで、Y社の創業者一族の相続税の税務調査結果が報道されました。申告漏れ金額3億1000万円だそうです。私が記事を読んで驚いたのは、あまりにもずさんな
『相続税対策』の手口です。。。
今回の報道によると国税局の税務調査で否認されたのは2009年10月にお亡くなりになった母親の相続税の申告内容です。
Y社創業者の相続税対策で、国税庁から否認された方法は以下の2つです
1.2009年に母親が、親族が経営する法人に6000万円を贈与し同時に同額の6000万円を同じ法人から借りた
2.2009年10月に、別の親族が経営する法人から3億7000万円を借りて3億7000万円の賃貸マンションを買った
このやり方があまりにもずさんな相続税対策でした。
長男は、国税庁の否認に対して国税不服審判所に訴えていましたが全面敗訴だったようです。
判決の概要は以下のとおりです(報道記事より)
1.法人に6000万円を贈与し、同法人から同額の借入を行ったとありますが、帳簿操作だけで実際の資金移動はなかったようです。つまり、架空伝票だったということです。
実際に資金を動かして上記方法を実行すると、母親の預金残高はまったく変わらないので、架空伝票にすることによって母親の預金残高はそのままで、母親が同族会社から6000万円借金しているように見せかけたということです。これによって財産が6000万円減ったことになります
2.母親が亡くなる直前に同族会社から3億7000万円借りて賃貸マンションを買いました。 報道によると、この賃貸マンションは時価は3億7000万円ですが、相続税評価額が1億2000万円だったそうです。つまり、マンション評価額と借入金の差額2億5000万円財産を圧縮できたことになります。
これだけであれば何の問題もありませんが、この取引ついて国税局は2つの指摘をしているようです
①.母親の病状がかなり進行していた時期の取引であることつまり本人の意思能力がすでに無い状態だったということ
②.母親の死後、直ちにこのマンションを売却していること
この①②の指摘は、高層マンションによる節税対策でもよく議論になるところです。
①は、本人の意思能力がないことが医学的に明らかであれば、節税対策としては認められません。
②は、亡くなる直前に購入して、死後直ちに売却すると過去の事例ではすべて税務調査で否認されています。
高層マンションの節税対策でも税務調査で否認される事例は②のパターンです。
いずれにしましても、Y社創業者一族の節税対策はあまりにもずさんすぎます。
相続税の節税対策は、時間をかけてじっくりと専門家に相談して慎重に取組むことをおすすめします。