建物1棟を経営するアパート経営
アパート経営とは基本的に建物1棟を所有し経営するビジネスです。
土地・建物をまとめて購入することになるため、マンション経営と比べて初期費用がかかります。
ただし、マンション経営の場合は一般的には1室から始めることになり、空き家リスクの分散ができませんが、建物1棟を経営するアパート経営ではそれが可能になります。
また、将来的にアパートの減価償却が終了となったとしても、土地が残るというメリットがあります。
「建物1棟を経営する」と聞くとハードルが高いように感じられるかもしれませんが、上記のようなメリットに加えて、建物1棟を同じオーナーが所有・経営していることで、経営上の判断が迅速に行えるという特徴もあります。
アパート経営と
マンション経営の違い
アパート経営とマンション経営を混同している方も多いでしょうが、様々な点で異なります。ここでは、アパート経営とマンション経営の違いについて解説します。
アパート経営 | マンション経営 | |
---|---|---|
初期投資 | 土地・建物をまとめて購入しなければならないため、初期投資がかかる | 1室から購入できるので初期投資が抑えられる |
利回り | 建物1棟の経営なので利回りが高い | 利回りが低い |
家賃収入以外の利益 | 自動販売機による収入など、他の利益の確保が可能 | 家賃収入以外はなし |
融資審査 | 初期投資が高いので、比較的審査は厳しい | 初期投資が低いので審査に通りやすい |
修繕費用 | 建物1棟の経営なので修繕費用がかかる | 修繕費用が抑えられる |
減価償却額 | 1年の減価償却額が大きい | 1回の減価償却額が少ない |
出口戦略 | 複数の出口戦略が考えられる | 売却以外の出口戦略はほとんどない |
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アパート経営のメリット
アパート経営には様々なメリットがありますが、主なものとして次の4つが挙げられます。
比較的安全・長期的な収入が期待できる
アパート経営では、入居者の確保さえ上手くいけば、比較的安全な経営が可能で、長期的な収入が期待できるようになります。またアパートという形態は一般的に景気による家賃の変動が少ないとされているので、経営が安定しやすいと言えます。
経済情勢に左右されにくい
インフレによりお金の価値が下がっても、不動産の資産価値は影響を受けにくいとされています。
そのため、経済情勢に左右されない安定的かつ長期的な経営が可能になります。
資産が現金のみだと、インフレの影響を受けて資産価値の減少を招く恐れがありますが、不動産を所有していることでそうしたリスクが回避できます。
相続税対策に有効
アパート経営を行っている収益物件の相続税評価額は、時価よりも安くなるのが一般的です。
そのため、売却すると1億円の価値がある不動産も、収益物件として相続すると評価額は3,000万円など大幅に下がるため、相続税の節税に繋がります。
老後の資金が確保できる
アパート経営により継続して家賃収入を得ることで、老後の資金が確保しやすくなります。
またローンを組んでアパート経営している場合、ローンを完済すれば手元に多額のキャッシュが残り、貯蓄に回せるようになります。
アパート経営のデメリット
アパート経営には様々なメリットがある一方で、次のようなデメリットもあることを把握しておきましょう。
デメリットを理解することは、実際に経営を始めた際のリスクヘッジに繋がります。
初期費用がかかる
アパート経営では建物1棟を経営することになるため、マンション経営などと比べて初期費用がかかります。また土地・建物の購入費、建設費用など以外にも、保険料や登録免許税などの費用が発生することも把握しておきましょう。
空室リスクがある
経営するアパートがいつも満室という保証はなく、空室リスクがあります。空室が増えると家賃収入が減少するため、ローンを組んでいる場合には自己資金から返済しなければなりません。また、空室期間が長ければ長いほど、管理の手間が増えることになります。
修繕費用がかかる
アパートの資産価値の下落を抑えるために、建物の老朽化を防ぐ修繕が必要となります。毎日の清掃といった細かなメンテナンスに加えて、長期的な大規模修繕を行わなければならないときもあります。大規模修繕には多額の費用が必要になりますので、毎月の家賃収入から積み立てておく必要があります。
売却しづらい
所有するアパートを売却して現金化しようと思っても、中古アパートは買い手が少ないため、経営に行き詰まってもすぐに撤退するのは困難です。
経営難の中、アパートも売却できないとなると、負債を抱え込んでしまう恐れもあります。
アパート経営にかかる
初期費用は?
アパート経営を始めるにあたって、「どのくらい費用がかかるのか?」ということは、気になるところでしょう。
こちらではアパート経営にかかる初期費用の目安をご紹介します。
アパートを購入する場合
アパートを購入するにあたって、物件の購入費だけでなく、不動産取得税や登記費用もかかることを知っておきましょう。
購入時に必要な費用 | アパート購入費 (例:1棟8戸・木造築5年以内・土地価格を含む) |
5,000万円~1億5,000万円程度 |
---|---|---|
印紙代 | 1,000円~6万円程度 | |
不動産取得税 | 固定資産税評価額×税率(3%) | |
登記費用 | 30~50万円程度 | |
その他の費用 | アパートローン手数料 | 借入額の1~3% |
各種保険料(地震・火災保険料など) | 50万円程度 |
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アパートを建築する場合
アパートを建築する際には次のような費用が発生します。
現況測量費 | 30〜50万円程度 |
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地盤調査費 | 20〜50万円程度 |
アパート建築工事費(1棟8戸) | 木造:全国平均4,776万円 鉄骨造:全国平均9,344万円 鉄筋コンクリート造:全国平均1億1,472万円 |
印紙代 | 1,000万円超5,000万円以下:2万円 5,000万円超1億円以下:6万円 1億円超5億円以下:10万円 |
登記費用 | 30~50万円程度 |
各種保険料(地震・火災保険料など) | 40~80万円程度 |
不動産取得税 | 固定資産税評価額×税率(3%) |
借入関連費用 | 100〜200万円程度 |
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アパート経営にかかる
維持費用は?
アパート経営を続ける中で、次のような維持費用が発生します。
毎月発生する費用 | 光熱費 | 1万円程度 |
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管理費 | 18〜40万円程度 | |
損害保険料 | 1~10万円程度 | |
随時発生する費用 | 修繕費 | 1~100万円程度 |
リフォーム費 | 10~300万円程度 | |
入居者募集費用 | 10〜40万円程度 | |
仲介手数料 | 家賃の半月分 | |
法定点検費用 | 7〜10万円程度 | |
火災保険料 | 40〜80万円 | |
固定資産税 | 100〜250万円程度 |
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アパート経営の開始までに行う
6つのこと
1物件探し
アパート経営を開始するにあたって、まず行うのは“物件探し”です。ご自身が理想とする条件をクリアにしておき、それをできるだけ満たす最善のものを見つけ出すようにしましょう。
2買付証明書を提出(中古アパート)・
収支計画を作成(新築アパート)
中古アパートを購入する場合、希望の物件が見つかれば買付証明書を提出して、購入の申し込みを行いましょう(後にキャンセルしてもペナルティはありません)。
新築アパートを建築する場合は、不動産会社などから見積り・利回りの見込みを取り寄せて、収支計画を立てます。
3ローン審査
アパート購入・建築の為の自己資金がない場合、資金確保のために金融機関へローンを申し込みます。事前に仮審査を受けておき、後に本審査を受ける流れが一般的です。
なお、本審査が下記の売買契約・建築請負契約後になる場合には、「審査に通らなければ契約解除できる」という特約を付けておく必要があります。
4売買契約(中古アパート)・
建築請負契約(新築アパート)の締結
中古アパートの購入を決めたら、売買契約を締結します。
新築アパートの場合では建築請負契約を締結します。
5管理会社を決定
オーナー自身で物件を管理する場合を除き、毎日の清掃、修繕、入居者の募集、入居者同士のトラブルへの対応などを管理会社に委任します。
6入居者募集
一定期間、満室保証がなされる“サブリース契約”を除き、入居者募集を行う必要があります。
アパート経営に精通した税理士に相談しましょう!
アパート経営を開始する際には様々な初期費用がかかります。それを回収でき、利益を挙げられる保証はありません。必ずリスクは潜んでおり、それを回避して安定的な家賃収入を得るためには、アパート経営に精通した税理士のサポートが不可欠です。
神戸の近江清秀公認会計士税理士事務所では、アパート経営に強い税理士事務所として、オーナー様の経営を全面的にバックアップします。
これからアパート経営を始める方は、物件探しや建設会社探しだけでなく、“頼れる税理士”に依頼して、今後のビジネスについて有益なアドバイスを受けるようにしましょう。